完成予想模型(2018年5月撮影)

DESIGN

1991年に建てられた「砧テラス」。約100mに及ぶ長細いガーデンパッセージを挟んで、36戸が連なるメゾネットタイプの集合住宅です。

28年を経てリノベーションの設計をしたのは、芦沢啓治建築設計事務所の芦沢啓治さん。
建築のみならず、インテリアや家具のデザインまで手掛け、空間をトータルでつくりあげることのできる建築家です。

芦沢さんのディレクションによりランドスケープデザインを担ったのは、橋内庭園設計の橋内智也さん。
現代的なセンスと、現場を大切にする実直なスタイルが魅力の造園家です。

お二人に、どのようにして砧テラスを生まれ変わらせたのか、語っていただきました。

インテリア・マテリアル(2018年5月撮影)

正しいデザインで、
居心地のよい空間をつくる

建築家 芦沢啓治/芦沢啓治建築設計事務所

芦沢「本当にいいデザインとはなにかをいつも考えています。デザイナーは、自分が表現するものであるがゆえに、つい過剰なデザインをしてしまいがちです。そうではなく、しっかりと居心地のいい空間づくりに立ち戻ること。そして、正しい材料、正しい色、正しい形を丁寧に積み上げていく。

居心地のいい空間の本質は、いつの時代も変わらないはずです。とはいえ、ライフスタイルは時代とともに少しずつ変わっていく。リノベーションでも、現在のライフスタイルに合わせた調整をしています。

また、砧テラスはひとつの“まち”のような形をした集合住宅です。それぞれがちょうどいい絶距離感を選べて、プライバシーを守りながら共存できるような設計にしました」

人の居場所があるランドスケープ

完成予想模型(2018年5月撮影)

芦沢「砧テラスは長いガーデンパッセージが大きな特徴です。そこで、リノベーションにあたって、ランドスケープという観点から物件を捉え直しました。もとのガーデンパッセージは中に入るようなつくりではなかったので、人が入ることを促す動線をつくることにしました」

橋内「1本構造的な舗装を入れました。はっきりとした道ではなく、芝生が分断されない、隙間のある道。毎日通るためというより、散歩で歩くニュアンスです。
また、ところどころに起伏をつけて、さらに土を盛った部分に植栽をしています。すると、中に人がいても植物の影になって微妙に見え隠れする。丸見えになっているよりも落ち着けると思います」

芦沢「地面は多少起伏があった方が、こちら側とあちら側の領域ができて面白いですよね。盛り土に沿って、さりげなくベンチも設置しました。夜は街灯ではなくベンチの底面から光がにじみ出ます。どれくらい座ってもらえるかわかりませんが、犬の散歩中に一休みしたり、住人同士で会話したりすることもきっとあるでしょう」

プライバシーを守りながら
外とつながる

ランドスケープデザイン 橋内智也/橋内庭園設計

リノベーション前の中庭(2018年5月撮影)

芦沢「橋内さんは、園芸家として植物のことを熟知しているだけでなく、感性がモダンで、建築との相性も理解できる。今回のランドスケープでも、植物の動きや色味を楽しめるデザインを考えてくれました」

橋内「例えば高木は、月日とともに枝葉が成長して重くなっていたので、全体的に剪定をして景観をスッキリさせています。足元には風でゆれるようなモダンな草を植えました。それから、もともとの造園計画で四季を感じられる花が植わっていたので、そのまま活かしながら、青や黄色みのあるカラーリーフも植えています。すると、通年で微妙な色味のグラデーションを楽しめる。芝生も、冬枯れするものだけでなく、冬に緑になる種類を混ぜています」

芦沢「住人はランドスケープを通って家に帰るので、ランドスケープと家のフィーリングは当然つながっているべきです。もともと各家にも小さな庭があるのですが、ランドスケープとは重いガラスブロックで遮られていました。そこでブロックを取り払って、代わりに植栽をすることでランドスケープとのつながりをもたせて、風通しをよくしました。
逆に家のエントランスはオープンになっていたので、専用庭からつながるテラスのような空間に仕上げて、住人がくつろげるようにしました」

完成予想模型(2018年5月撮影)

ダイナミックなメゾネット構造

完成予想模型(2018年5月撮影)

芦沢「家の方は、駆体の空間構造のよさを引き出すように設計しました。解体工事のとき、建物がもともと持っているダイナミズムをはっきりと見てとれました。大胆な設計で、当時実現させるには、さぞかし苦労があったんじゃないかと。その価値をできるだけ活かすことが、空間の力になると確信しました。以前の間取は小さい部屋のある3LDKで、建物の空間構造は活かされていませんでした。そこで、壁をとりはらって、メゾネットの1階と2階で大きくつながる、解放的な空間を生み出しています。

メゾネットの、高さのある部屋っていいですよね。階段をあがるにつれて自然光の量が増えたりして、また違う見え方になる。つながっているのに単調ではなく、メリハリがきいている。そういう面白さは、メゾネット建築でしか味わえません。今回も、階段の上り下りで気持ちの切り替えができるようにしました。階によってランドスケープの眺めが変わるのも、楽しんでもらえたら」

肌触りを感じられるインテリア

モデルルーム家具イメージ/KEIJI ASHIZAWA DESIGN(2018年7月撮影)
Photo: Masaki Ogawa

モデルルーム家具イメージ/Norm Architects(2018年7月撮影)
Photo: Masaki Ogawa

芦沢「部屋の壁やフローリングの材料は、肌触りを感じられるものをできるだけ選びました。建築材料は、住む人にかなり影響を及ぼすものだと思います。例えば、壁や床、カーテンなどがすべてツルッとしていると、感覚が鋭敏にならないというか。家具も同じです。しっかり肌触りのあるもので組み立てた空間が、生活に恩恵を与えてくれる。

うちの事務所は普段から家具のデザインもしているので、今回モデルルームの家具もデザインしました。それにあたって、プロジェクトを立ち上げました。砧テラスのためにデザインした家具を、家具メーカーのカリモクに制作してもらいます。また、モデルルームは2部屋あったので、ひと部屋はうちでデザインし、もうひと部屋はデンマークのデザインスタジオNorm Architectsに依頼しました。彼らは建築からインテリア、プロダクトデザインまで手掛けており、ミニマルなセンスが世界的に支持されています。先日も、デザイナーと一緒に日本の建築物を巡りながら、ディスカッションやスケッチを重ねました。彼らはもともと日本文化に影響を受けていて、北欧の人と日本人とのフィーリングの近さを互いに感じています」

KARIMOKU CASE STUDY/
KINUTA PROJECT >>

ARCHITECT MEETS KARIMOKU/
KEIJI ASHIZAWA DESIGN >>

ARCHITECT MEETS KARIMOKU/
NORM ARCHITECTS >>

“architect meets karimoku” talk event & reception

バランスのいい空間はハーモニーを奏でる

インテリア・マテリアル(2018年5月撮影)

芦沢「僕もNorm Architectsのデザイナーも、空間はバランスが重要だと考えています。例えば、床や壁、キッチンの天板などが同じトーンで揃っていて、ちょっとずつ材質が違っていたりするのを見て、人は初めてそこをよい空間だと思える。

家具をデザインする際も、空間にフィットするものを目指しました。ここに住む人は家で仕事をすることが多いだろうとか、ある程度人物像を想定しながら、テーブルや椅子、デスクなどの配置を決める。それから、寸法違いで材料を揃えたり、足の形を似せたりしてデザインする。全部同じだとつまらないし、かといって単独でデザインするとバラバラになる。ひとつの家具のアイデアをリピートさせながら、ほかの家具をデザインしていくんです。すると部屋に入ったときに、そこにある物のリズムが同じだから、ちゃんとハーモニーを奏でる。モデルルームでも、ぜひ空間のハーモニーを感じてください」

建築、家具、プロダクトのデザインまで幅広く手掛ける芦沢さん。

リビタでもマンションや戸建のリノベーションを手掛けております。

リアージュ砧テラスで是非「居心地のいい空間の本質」を体感してみてください。

事例photo上:八雲の家(ReBITA × Keiji Ashizawa Design)
事例photo下:イクシクス麻布十番(ReBITA × Keiji Ashizawa Design)

www.keijidesign.com