concept room(2019年9月4日撮影)

リアージュ砧テラスの新しいコンセプトルームは、勾配天井の天窓から光が降り注ぐとても居心地の良い空間です。

この空間ならではのインテリアとグリーンを、祐天寺にあるヴィンテージ家具・雑貨と古着のショップ「SEIN」のオーナー竹田弘さんと、
スタイリストであり植物を使った空間演出を手掛けている石田有佑さんに手がけていただきました。

長年共に空間を作りあげてきた2人に加えて、かつてSEINで働いていた経歴を持ち、
今回の内装の企画を立ち上げたリビタの山越裕之さんに、お話をうかがいます。

concept room(2019年9月4日撮影)

「グリーン」と「木」、
そして「時間」がキーワード

右から竹田さん、石田さん、山越さん(SEIN店内にて)

竹田「リアージュ砧テラスを見たとき、まるで彫刻のような、ほかにはない建物だなと思いました。内装もやり甲斐があるなと」

石田「中庭の植樹も配置が計算されていて、風が吹いたときに草木が揺れてとても気持ちがよかった。建物自体が無機質だから、植物がよく映える空間ですね。その空気感を部屋の中にまで入れたいと思いました。部屋に入ると、空が抜けていて外の緑が近い。リビングは両面に大きな開口部があり風が抜けるし、ハイサイドライトからは日差しが降りそそぐ。植物にはよい環境です」

concept room(2019年9月4日撮影)

山越「今回の内装では、“グリーン”と“木”、そして“時間”をキーワードにしています。時間は、古いものを生かすこと。それが生まれた文化的な背景なども含めて現代に引き継ぐことを意識しています。共用部のリノベーションでは、“時間の痕跡”を感じさせることを意図して、もともとの外壁のタイルの目地を潰さずにあえて残しました。リノベーションだからこそ、住み継ぐ方々にもリアージュ砧テラスの物語性を感じ取って欲しい。共用部のデザイン監修をしてくださった芦沢啓治さんの考え方を、室内にも展開したいと考えました」

竹田「共用部の考え方を聞いて、巷にあふれるデザインの中から、いままでも、これからも美しい経年変化をたどると考えられる物、ちゃんと人の手でつくられた物、未来に残すべき確かな物を選んでいこうと思いました」

石田「リアージュ砧テラスは天井が高いので、グリーンは葉っぱの大きいダイナミックなものが似合う。住人と共存していくことを考えると、育てやすい品種で、形のよい育ち方をしていて、これからもさらによい枝振り、葉振りになりそうな植物を用意しました」

リアージュ砧テラスのために製作した、
こだわりのアイテム

concept room(2019年9月4日撮影)

竹田「今回、作家にお願いして新たにつくった物もあります。ひとつはコーヒーテーブル。一枚板でつくることと、大まかなデザインだけ指定して、あとはお任せしています。その作家は必ずいいものができてくるので。一枚板の家具を使いたいというのは、リアージュ砧の緑の心地よい空間から得た感覚が出発点でした。秩父に山を持つ、木をとても大切に扱う方がいるんです。木材は通常出回る前に乾燥させるのですが、今はほとんどが機械で乾燥させているんですね。でもその方は、木と会話をしながら自然乾燥をさせている。製材するときも、木の反りや節などの性格を読みながら、その木が一番素直に、自然体でいられる形を尊重しています。だから、木がとてもいきいきしています。コーヒーテーブルは、その方に選定してもらった木でつくっています」

山越「もうひとつ、作家にソファベンチの製作もしてもらっています。切り株をくりぬいた彫刻のようなデザインです。壁には、一枚板が壁に飲み込まれているような棚板もつけました。コーヒーテーブルと同じ方から分けていただいた木を使っているので、きっとよい経年変化をしてくれるはずです」

竹田「別の作家には、天井から吊り下げるモビールをつくってもらっています。リビングの、高さのある開放的な勾配天井と合いそうです」

concept room(2019年9月4日撮影)

石田「グリーンも、今回のために可動式の植樹台をつくりました。大きな植物は動かすのが大変で、同じ場所に置いたままになりがちです。でも、季節によって室内の環境が変化するのに合わせて、植物にとってベストな居場所も変化します。リアージュ砧テラスは天井が高いので、大きな植物を配置する自由度が高い。植物の位置を変えれば空間に変化をつけられるし、なにより植物も喜びます。植樹台があることで、大きい植物でも気軽に部屋に取り入れてもらいたいですね」

山越「水やりのとき、水受けをしていてもそこから水が漏れることがありませんか。特に大きな植物には水もたくさん必要になります。だから植樹台は、わずかに角度をつけて水が流れるようにして排水のためのバルブをつけています。水やりの際は下にトレイをいれておけば、お風呂やベランダに持っていって余った水を捨てられる。暮らしやすさも考えたデザインを竹田さん、石田さんと考えました」

暮らしと仕事の境目がないからできる表現

SEIN店内

山越「リアージュ砧テラスは、SOHOとしての利用が出来るなど、普通のマンションにはない特徴も兼ね備えています。住人となる方はそこで料理教室をしたり、ギャラリーにしたり、仕事ができるんです。今は働き方が多様化しているので、住まいも可変性を持ち合わせた場にしました。竹田さん、石田さんも仕事と暮らしの境目がないですよね」

竹田「趣味を仕事にしているっていうのかな。家のものを店に持ってきたり、店のものを家に持っていったりします。言ってしまえば、店自体が僕の家ですね」

concept room(2019年9月4日撮影)

石田「僕も家に植物がたくさんあります。仕事で植物を扱うことから得たヒントを家に持ち帰ることもありますし、その逆も多いです。好きなことだから境目がないというのがベースにありますが、仕事と暮らしが近いからこそ見えてくることがありますね。植物が空間にあるのとないのでは、風景だけでなく暮らし方が変わります。外にも緑があふれているリアージュ砧テラスで、少しでも部屋に緑を置きたいと思ってもらえるような空間をつくりたいですね」

竹田「リアージュ砧テラスは物件自体のデザイン性が高く、仕事にも暮らしにもよいインスピレーションを与えてくれる場所だと感じます。仕事と暮らしが近くにある人も、もちろんそうでない人も、よい刺激を得られる空間にしたいです。

concept room(2019年9月4日撮影)

自分なりに価値を見出し、
未来に残すべき物を残していく

concept room(2019年9月4日撮影)

竹田「SEINの建物もリノベーションで、もとは戦時中の1940年代前半、物資の配給のために建てられたそうです。洋食店、バスの車庫、喫茶店を得て、2012年に僕が借りました。天井をあけたらいい梁が出てきたので、あえて見せるようにして、植物のために屋根の一部を抜いて日光を入れています。店には、海外で買い付けてきた50〜90年代のヴィンテージ雑貨や古着を置いています。よく行くのはアメリカで、ニューヨーク、ワシントン、シアトル、コロラド、ロスなど、毎回何千キロも車を走らせます。たくさん見た分だけ、よい物と出会える回数も多くなります。狙っていない、ふとしたときにぐっとくる物が出てきたりするんですよ。人の思いや手のぬくもり、背景のある物に引かれます。日の目を浴びていないものに自分なりの価値を見出し、未来に残すべきだと感じるものを買い付けてきて、店に置いています。

concept room(2019年9月4日撮影)

お客さんは、カメラマンやデザイナーなどクリエイターと呼ばれる方々もいらっしゃいます。そういう人たちはインスピレーションを受けるものを側に置いておきたいと思って、うちのアイテムを購入してくれることも多いですね」

ヨーロッパで運命的に出会った、
背景のあるアイテム

concept room(2019年9月4日撮影)

竹田「リアージュ砧テラスのために、ベルギー、フランス、オランダ、ドイツの4カ国を山越と2週間かけて回りました。リアージュ砧テラスに立ったときに、家具はシンプルながらデザインが効いているものを合わせたいと思いました。ベルギーのとある場所で、今までうちで扱った椅子のなかでもトップレベルのものが手に入りました」

山越「デザイナーはデンマークのアルネ・ホブマン・ オルセンという人で、1950〜60年代につくられた椅子です。メンテナンスもよくされていて、今回製作しているダイニングテーブルとも相性がよさそうでした」

アルネ・ホブマン・ オルセンの椅子(SEIN店内にて)

竹田「座面や立ち上がるときの持ち手部分など、プロダクトデザイン的にも考え抜かれた素晴らしいものです。かつ有機的なデザインがリアージュ砧テラスの直線的な構造とはある意味真逆のもの。今回は無機質な空間に人の手のぬくもりを感じさせるものをバランスよく配置したかったので、見た瞬間『これだ!』と感じましたね。60年前のものとは思えないほど状態がよく、今までこの椅子を使ってきた方々の愛情が伝わってくるようでした」

山越「パリのディーラー宅では、1900年代のいわゆるデコラティブなアンティークを扱っているなかに、簡素な木製の細長い蓋付きのバケツが、ぽつんとあったんです。つつましい存在感に惹かれて用途を聞いたら『1950〜60年代に家庭で使われていたフランスパン入れだよ』と。『今は使わなくなって、みんな適当に傘とか突っ込んでるけどね』と、なにげない会話だったんですけど、確かにその発想はいいなと思って買いました。時代とともに使われなくなったものに対して、物体そのもののフォルムの美しさや、素材など、本質的な価値を見出して、別の用途に見立てることはよくあります」

竹田「フランスでは60〜70年代の照明も見つけました。一見イサムノグチのakariのようだけど、樹脂でできていて触るとゴムっぽい。この時代ならではの珍しい素材です。アメリカでも見つかることがあるのですが、経年変化で樹脂が硬化したり、傷や穴があることが多い。今回運よく状態がいいものを見つけました。明かりがつくと柄が出ていいんですよね。これも内装に使う予定です」

一つひとつ見て触って買い付けたから、
感じられるもの

concept room(2019年9月4日撮影)

石田「グリーンも新たに買い付けに行きました。もともと市場はもちろん、日本各地の生産者のところに通っていて、リアージュ砧テラスの空間からインスピレーションを得たイメージをもとに、『こういうのありますか』と聞いて回りました。画像のやりとりもしますが、やっぱり行かないと出会えない。例えば、今回探した品種のひとつにモンステラがあります。育てやすくて耐寒性もある。いろんな場所にあるモンステラを一つひとつ見て、年数が経っていて、しっかりきれいに育てられていて、今後もよい形で育つであろう個体を見つけました。モンステラ自体は多く出回っているものですが、よいものを探そうとするとなかなかないですね」

リアージュ砧テラスのためのヨーロッパ買い付け

竹田「実際にものを見て触って選んでいるのは、僕らの買い付けと同じですよね」

石田「自分の目で見ないと気が済まないですね。時間はかかってしまいますが、そこに価値がある」

竹田「そうやって選ばれたものは、人が見たら『ああ、いいな』とわかる。無意識にでも感じるものだと思います。リアージュ砧テラスを訪れた方々にも、それを感じとってもらいたいですね」

concept room(2019年9月4日撮影)

SEIN

2012年オープン、国内外のヴィンテージ家具・アート・雑貨等を取り扱う体感型セレクトショップ。姉妹店であるTRAMPOTではヴィンテージの洋服を取り扱っている。

石田有佑

1983年生まれ。2002年から熊谷隆志氏に師事。2011年に独立。 洋服のスタイリングのほか、UI PRODUCTとして 植物を使った空間演出や植栽、植物関連のプロダクトデザインも手掛けている。

SEIN/ instagram >
石田有佑 / instagram >
TRAMPOT / website >