concept roomにて(2019年9月撮影)

木村文香さんは、テキスタイルデザイナーとして会社に勤めながら、
fuufuufuuを主宰し、押し寿司デザイナーとして活動しています。

仕事と暮らしがゆるやかにつながっている彼女に、
作品のこと、仕事のこと、理想の住まいについてうかがいました。

photo: Kyouhei Yamamoto

人にふるまう料理で、
自分の作品をつくりたかった

木村文香さん(concept roomにて/2019年9月撮影)

―  押し寿司をつくるようになったきっかけは?

私は10年ほどインテリア会社のテキスタイル部門で、靴下やベビー用品、カーテンなどファブリックデザインに携わってきました。そんななか、今から3年ほど前、自分の作品をつくりたいという気持ちが芽生えたのが大きなきっかけです。

concept roomにて(2019年9月撮影)

これまでたくさんの商品を世に出せた喜びがある半面、「物ってこんなに沢山必要なのかな」という疑問を抱くようにもなっていました。押し寿司のようにその場で喜んでもらえて、食べたらなくなり循環していくものを作品としていくことが、当時の私の制作スタイルにはとても合っていました。

それから、もともと人を招いてワイワイするのが好きな家庭で育った背景もあり、実家を出てからもよく友人を招いて小さなホームパーティーをしていました。自分のつくった料理をふるまいたい気持ちと、自分の作品をつくりたい気持ちとがうまく一致したんですね。 あるとき、立ち寄ったお店でたまたま押し寿司の型を見つけて、なんとなくだけれどビビッときて買って帰りました。

振り返ると、
大学時代と同じことをしている

photo: Kyouhei Yamamoto

押し寿司という表現方法に行き着くにはさまざまなきっかけがあったのですが、思い返してみると自然な流れだったようにも思えてきます。

入社当初から靴下のデザインに携わってきたのですが、設計する際のタテヨコの比率が、押し寿司の型の比率とほぼ一緒だったりして。この比率で美しく見える柄の配置を日々研究していたので、押し寿司をつくっていくときも馴染み深い感覚がありました。

photo: Kyouhei Yamamoto

それから、美大時代に制作していた作品も、押し寿司に通じるものがありました。ファイバーアートという、繊維で造形表現をする分野があるのですが、私は羊毛を用いてタペストリーなど立体的な作品を制作していました。繊維を積層させたあとに圧力を加えて繊維をひとまとまりにする「縮絨」という作業があるのですが、押し寿司を押す感覚となんだか似ているんです。 食材も繊維と捉える感覚はまさにこのファイバーアートの存在があってこそ培われたものでした。当時同じ研究室にいた友人がいまの私が押し寿司を押している姿を見て、「大学のときも同じ姿勢で作品をつくってたよね」と言っていました(笑)。

そして完成した押し寿司を、友人知人にふるまってみたら、面白がってもらえて。以来、誰かの家に遊びに行くときは、ここぞとばかりに押し寿司を手土産にして宣伝していました(笑)。するとありがたいことに、徐々に押し寿司のケータリングやワークショップを依頼されるようになりました。

押し寿司の柄の発想源は?

concept roomにて(2019年9月撮影)

―  押し寿司の柄はどのように決めているのですか?

オーダーを頂いていたり、つくりたい柄が決まっているときは、スケッチをしてから使えそうな食材を集めます。あれこれ考えず探究心の赴くままにつくるときは 一風変わった野菜を買ってきて、切り方をいろいろ変えてみて、いいなと思う形を見つけます。それを型に入れながらインスピレーションでデザインを決めていきます。心がけているのは、野菜の形や色を最大限活かすということ。野菜はそのままで美しいし、毎度異なる「いい形」を見つけるのはとても楽しいです。

photo: Kyouhei Yamamoto

それから、味のバランスも考慮します。テキスタイルの特性でもある「リピート」の考え方を押し寿司にも活かしています。押し寿司上で柄が繰り返されるということは、味わいもまた繰り返されるということ。切り分けたとき、一切れずつの見え方や味わいに大きな 偏りが出ないよう、味も見た目もバランスよくデザインすることを心がけています。 また、食材の組み合わせ方も工夫し、意外性のある味わいをつくることにも注力しています。

食材は、魚のマリネや生野菜のほかに、普段から冷蔵庫で保管しておける常備食も使います。いくつも食材を組み合わせて積層させていくことで、味わいや食感に奥行きが生まれます。

photo: Kyouhei Yamamoto

テキスタイルと押し寿司、
どちらもつくりたい

photo: Kyouhei Yamamoto

―  会社勤めと作品づくりを、どのように両立していますか?

企業の一人として携われるテキスタイルは、工場の方との連携が必須なチームプレーです。 どうしたらよい製品になるのか、技術的なサポートをしていただける分、デザインの方向性は自分の言葉で「こうしたい」というのをしっかり伝えられなければ形にしていけません。色や素材を選定していく工程はありますが、手で一からつくっていく感覚というより、どうしたらよくなるかを考える、ということが多いと思います。

それに対して押し寿司は、すべてが自分の作業によって生まれます。食材を下ごしらえして、それを押し型の中に積層させて形づくっていきます。手を動かしながら目の前の状況に反応し、集中して押し寿司をつくっていく工程は、 ある種とても開放的でリラックスできる瞬間でもあります。

(c)fuufuufuu

自分としては仕事も押し寿司も、どちらも「テキスタイルをつくっていること」として捉えていますが、向き合い方が異なるので、気持ちが切り替えられてとてもリフレッシュできます。 基本的に休日に押し寿司にまつわる活動をしています。夫も休みなのでいつもサポートしてもらって、助かっています。

今後は、もっと大きな押し型でよりテキスタイルに近い押し寿司をつくってみたいです。また、自分がデザインしたクロスや風呂敷を使って 押し寿司とコーディネートしたいなぁなんてイメージを膨らませています。

仕事場にも、ギャラリーにもなる
住まいが理想

concept roomにて(2019年9月撮影)

―  木村さんの考える理想の住まいとはどんなものですか?

いまの二人住まいになる際に、優先順位の一番になったのは「創作意欲がわく家に住みたい」ということでした。夫もアートやデザインが好きなので、そういう家を探しました。

リアージュ砧テラスは、創作するのに素晴らしい環境だと思います。まず、自然光がたくさん入る。もし家でテキスタイルの仕事をするのなら、こういうところがいいです。広い空間があるので、布を広げたり、作品を遠くから眺めたりもできます。もちろん、押し寿司をつくってパーティーもしたいですね。キッチンも広々していてすごく使いやすい。羨ましいです。

concept roomにて(2019年9月撮影)

ギャラリー兼住居兼、仕事場みたいな空間には、以前から憧れがありました。「実際そんな場所あるのかな?」と思っていたんですが、リアージュ砧テラスはまさにそういう空間。暮らしと仕事がいい感じに溶け合いそうです。

密かに夢見ていることがありまして、クリエイティブな仕事に関わっている仲間たちと一緒に商店街みたいなところに住んで、それぞれが得意なことをして暮らして、小さな村のような場所がつくれたら楽しいだろうなって想像しています。そんな夢がいつか叶うとうれしいです。

ガーデンパッセージ(2019.10撮影)